オトナな部長に独占されて!?
6階建ての社屋の、屋上に繋がるドア前に立っていた。
勢いよくドアを押し開くと、ビルとビルの間の秋晴れの空が目に飛び込んだ。
その綺麗な水色に、少しだけ怒りのボルテージが下がる。
後手にドアを閉めて、「はぁぁぁー」と長い息を吐き出した。
屋上に来て良かった。
積極的に認めたくはないけど、やっぱり私は田舎者だ。
自然に囲まれた環境で育ったから、広い空や緑が時々恋しくなる。
営業の仕事を選んだのは、自分の頑張りがわかりやすく数字で表れると思ったからだけじゃなく、コンクリートの建物の中に一日中缶詰にされるのが嫌だったから。
外に出たい。
ビルが建ち並ぶ東京の空は狭いけど、それでも綺麗な水色を見ると、ガッチガチに固まった心がゆっくり解けていく……。
私はそうやってたまに屋上に気分転換しに来ているけど、他の社員は滅多に来ない。
ベンチがひとつあるだけで、他には何もないし、特に景色がいいわけじゃないから。
空に向けて両腕を突き出し、「んん〜!」と背伸びをしたら、視界の隅にチラリと紺色の何かが映った。