オトナな部長に独占されて!?
部長の手腕
◇◇◇
11月。葉月部長がやってきて、ひと月が経過した。
9時45分の営業部のフロアは、そろそろ外回りに出掛けようとしている社員達で活気付いている。
私もこれから出掛けようとしていた。
仕事鞄にパンフレットや資料を挟んだファイル、タブレットを入れていると、隣のデスクから立花萌の大きな溜息が聞こえてきた。
「はぁぁ〜」
チラリと横目で彼女を見て、視線をすぐに手元に戻した。
よし、忘れ物はない。
これから訪問予定のお客さんは、中々手強い。
前回はああでもない、こうでもないと言われたので、今回はそれを論破できるだけの資料を揃えた。
訪問すること、15回。
今日こそ契約にこぎつけてやる!
外回りに出掛ける準備を整え終えて鞄を閉じると、またしても隣から更に大きな溜息が聞こえてきた。
「はぁぁぁ〜」
今度は机に向けてじゃなく、思いっきりこっちを向いての溜息だ。
それを無視して、私は向かいのデスクで仕事中の先輩社員に声を掛けた。
「高村、外勤してきます。それじゃ」
「ちょっと! 円香先輩、待って下さいよぉ!
可愛い後輩の溜息を無視するなんて、ひどくないですかぁ?
も〜、私、すねちゃいますからね、プンプン」