オトナな部長に独占されて!?



時計の針は9時半を指していた。

荒ぶる心に『男は嫌い!』と結論を出した時、営業部のフロアがザワザワと騒がしくなる。


手元の資料から顔を上げて辺りを見回すと、男性でも割といい人の田中課長、42歳が、デスクから慌てて立ち上がる様子が目に止まった。

ドア方向へ、小走りに駆けていく。


なぜかざわついている周囲の声には、黄色い声も混ざっていた。



「新部長、来た!
うっそ⁉︎ やたら若くない?」


「キャー! イケメン!
やばい、鼻血出ちゃう〜」



そんな声を耳にしながら、走っている田中課長を目で追うと……。

私の視線は、田中課長の前に立つひとりの男性に釘付けになってしまった。


びっくり……。

取り敢えず、それ以外の言葉が今は出てこない。


狸オヤジが移動になったから、当然、空いた営業部の部長ポジションには、代わりの人が来るのはわかっていた。


人事異動の告知表が一週間前に貼られていたので、名前と前のポジションも確認済み。


新部長の名前は、葉月紳一郎(ハヅキ シンイチロウ)。

我が社は海外にも数カ所の支社を置いていて、そのひとつ、ロンドン支社の支社長を務めていた人だという情報は頭に入っていた。


でも……まさかこんなに若い人だとは思わないから、びっくり仰天だよ……。


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