オトナな部長に独占されて!?



後継問題があるなんて、私は考えもしなかった。

その結果、店主の意向に沿わない営業しかできなかったという訳なのか。


これは……敵わない。

契約が取れたも同然なのは嬉しいけど、悔しいよ。

葉月部長に完敗みたい……。



部長はガラス越しに駅前の通りを眺めながら、静かに珈琲を楽しんでいる。


その横顔は、美術品みたいに美しかった。

綺麗だけど、フェイスラインや喉仏には男性的な力強さもハッキリと感じられる。

ダークブラウンの瞳と、珈琲に濡れた形の良い唇は、大人の色気があって……。


葉月部長がイケメンなのは、営業部に現れた初日に分かっていた。

女子社員達にキャアキャア言われる容姿であることも、知っている。


それなのに今改めて、自分の心臓が大きく脈打つのを感じていた。


葉月部長って……かっこいいのかも……。



心の中で呟いてしまってから、ハッとした。

何考えてんのよ、私。
これじゃ、立花萌と同類になってしまう。


私は男に依存して生きたくない。

恋愛? そんな言葉は、私の人生に必要ないんだから。



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