オトナな部長に独占されて!?



まずい方向に傾きかけた気持ちをすぐさま通常モードに戻し、ご馳走してくれたカプチーノのお礼を言って、珈琲ショップを出た。


葉月部長と鶴亀写真館について話をしながら、駅の改札に向かう途中、また私のスマホが震えた。


仕事関係だろうと予想して取り出したが、それは実家の母親からの着信だった。


出るのが嫌……そう思ってしまう。


そのままコートのポケットにスマホを突っ込もうとしたら、葉月部長に「社外の用事ですか?」と聞かれてしまった。



「実家の母からです」


「どうぞ、電話に出て構いません。
何か急ぎの用だと困ることになりますよ」



葉月部長が改札手前の柱の前で足を止めた。

私も部長の斜め後ろで足を止めたけど、通話に出る気はない。


きっと、くだらない用事。

父親がこう言ったからこうしなさいとか、弟の就活を手伝えとか……。

私にとっては不愉快極まりない話に決まっているから。


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