オトナな部長に独占されて!?
手の中のスマホを無言で睨んでいると、スマホは震えるのをやめた。
ああ、良かった。そう思ったのに、すぐにまた母が掛け直してきた。
部長はなぜ出ないのかと言いたげに、私を見ている。
出たくない……。
でも、出たくない理由を葉月部長に説明するのも、無理だし……。
諦めてスマホを耳に当てると、部長は気を遣ってか、私から数歩離れた位置で背を向けて待っていてくれる。
「もしもし」
「あ〜良かった、繋がった。
あのね、お母さん、円香に言わなきゃならないことがあってね」
母親はいつもそう。
『今電話していても大丈夫?』なんて、聞かれたことは一度もない。
私の仕事なんかどうでもいいと言いたげに、向こうの都合だけで掛けてくる。
「私今、仕事中だから、手短にお願い。
後でもいい話なら、夜に掛け直して」
「後じゃダメなんだよ。仕事なんかよりずっと大事なことさ。
お父さんがね、円香の縁談持ってきたから。
いとこの叔父さんとこの、長男の安男(ヤスオ)くんのこと、あんた覚えてる?
安男くんがね、円香を是非お嫁さんに欲しいと言ってね、お父さんが……」
「絶対に嫌」
「そんなこと言わないでよ。
ちゃんとしたお家の子だよ?いい話じゃないの」
「安男って確か、私よりかなり年上じゃなかった? 48か49くらいでしょ?
なんで25の私が、今まで誰も嫁に来てくれなかった50近いオッサンと結婚しなきゃなんないのよ‼︎」