オトナな部長に独占されて!?
駅の構内は、人が多くて賑やかだった。
スマホに向けて声を荒げても、誰も気に留めないでいてくれるのが、せめてもの救い。
「いい加減にして‼︎」
と通話を切ろうとしたら、母が慌てたように付け足した。
「親心が分かんないのかい?
お父さん、あんたのこと心配してるんだよ。
女なのに仕事ばっかりだし気も強いわで、嫁の貰い手がないんじゃないかって言ってるよ。
早くこっちに帰ってきなさい。お嫁入りして、旦那さんに尽くして、子供を産むのが女の幸せなんだから。
お母さんを見て育ったんだから、分かるでしょ?」
「悪いけど、全くわからない。
お母さんみたいになりたくなくて田舎を出たって、何度も言ったよね?
女の幸せ? 男に作ってもらう幸せなんかいらないね。
自分の幸せは自分の力で掴み取る。
お父さんみたいなモラハラDV男と結婚して、お母さんの何が幸せなのか、全く理解できないから。じゃ」
母親はまだ何か喚いていたけど、通話を切って、ついでに着信拒否に設定しておいた。
昔のことはなかったことにしたいくらいなのに、不遇の子供時代を思い出してムカムカしてしまった。
男尊女卑傾向の強い田舎町。
大事に大事に王子様のように扱われる弟と、不用品か召使いのように扱われた私。
やっと大人になって田舎から抜け出せたのに、連れ戻そうとするなんてハラワタが煮えくり返る。