オトナな部長に独占されて!?
立花萌は部長デスクから離れて、今度こそドアに向かって歩いていた。
仕事より大事な用事って、部長を食事に誘うことだったのか。
お茶汲み係を解任され、中々近づけなくなったから思い切ったのだろうけど、見事に玉砕したね。
おバカさんだなと思う一方で、そんなことで部長に話しかける勇気があることを凄いと思ってしまった。
私は例の件を謝ることもできずにいるのに。
私って、意外と意気地がないのかも……。
22時。
営業部フロアの照明は、私の真上と第三営業部の係長デスクの上のみ点いていて、他は消されていた。
広いフロアにまだ残業中なのは、二人だけ。
その係長も、
「高村さん、まだ頑張るのかい?ほどほどにしといて帰った方がいいよ。じゃ、お先に」
と言い残して帰ってしまった。
「ふぅー」と長い息を吐き出して、凝り固まった首を回した。
明日は午前中に2件、午後に3件の顧客とのアポを取ってしまったから、今日はいつもより忙しい。
でも、後もう少し。
設計部の人たちと相談して作った大まかな手書きのプランを、パソコンに入力してタブレットに移したら、終わったような物だから。