オトナな部長に独占されて!?



急いで退社の支度をして会社を出たのが、22時18分。

間に合わないでしょと思ったが、目的地は2軒隣の商業ビルの最上階にあったので、ラストオーダーの時間前に無事着いた。


シンプルでシックな色調の店構え。

大人の雰囲気漂うお店のドア前に立ち、私は葉月部長を見上げた。



「あの、私はこんな格好で入ってもいいのでしょうか……」



店名の頭文字は【ル】。
フレンチのお店だよね?

私のコートの中は営業用の地味なパンツスーツで、メイク直しも昼以降していないから崩れまくり。


フレンチと言えば、ドレスコードがあるでしょう。

スーツ姿が似合いすぎている部長はいいとしても、私は入店を断られるんじゃ……。



葉月部長は「大丈夫ですよ」と言いながら店の扉を開け、ごく自然に私の背中に手を添えて中へと誘う。



「カジュアルフレンチですので、ドレスコードはありません。
夜は夜景の見えるワインバーとして営業しているお店です」



ふーん。会社の近くにこんな素敵なお店があるなんて、全く知らなかった。

一方部長は何度か来ているようで、黒いベストに蝶ネクタイのウェイターさんに、「葉月さん」と名前で呼ばれていた。


< 67 / 145 >

この作品をシェア

pagetop