オトナな部長に独占されて!?
お客さんに対しては、男性だろうと笑顔で積極的に関わってきたつもりだった。もちろん、それは契約が欲しいから。
社内の男性連中とも、会話しないと仕事にならないから普通に接してきたつもり。
でも……。
それは私の『つもり』だけであって、実際は男性とのコミュニケーションに問題アリアリだったという事なのか。
知らなかった。
私の男嫌いが、仕事に影響を及ぼしていたなんて……。
仕事に関して常に強がりたい気持ちが、シオシオと萎びていった。
もしかして今まで、無意識の内に男性のお客さんに対して失礼な言動を取っていたのかもしれない。
これはマズイ。
でも、どうすればいい?
田舎を思い出せばムカムカするのを押さえられないし、下山や狸オヤジ達を腹立たしく思う気持ちも、いまだに健在。
困って俯いていると、葉月部長に左手を出すように言われた。
引っ込めたばかりの左手をテーブルの上に戻すと、再び大きな手が重なり、キュッと握り締められた。
「高村さん、私の目を見て答えて下さい。
あなたが男性を苦手としていることは理解しましたが、私もその中の一人に入るのでしょうか?
今、手を握られて、あなたは不快に思っていますか?」