オトナな部長に独占されて!?
月を見てあなたを想う
◇◇◇
12月。どんよりとした冬曇りの空の下、今日も朝から外勤で歩き回っていた私は、16時半にやっと社に戻ってきた。
「戻りました」と第二営業部の係長に一言告げてから、コートを脱いで自分のデスクに向かう。
足の疲れを感じながら椅子にドサリと腰掛けると、机の上の湯気立つカフェオレに気付いた。
会社の自販機で売っている紙コップの飲み物の中で、カフェオレが一番砂糖の量が多い。
大抵は自分で激甘珈琲を作るけど、たまに自販機で買うとしたら、私はカフェオレ。
誰が差し入れてくれたんだろうとキョロキョロしたけど、視線が合う人はいない。
見回していると必然的に部長デスクで電話中の葉月部長の姿が視界に入ってきた。
以前残業中に、部長からカフェオレを差し入れてもらったことがあったけど、今回の差し入れは部長じゃないと即断する。
それで、隣の席の立花萌に「あのさ、このカフェオレって……」と聞いてみたら、首を傾げられた。
「さっきまでぇ、トイレでメイク直ししてたんでぇ、その時に誰かが置いていったのかもしれないですぅ。
あっ! もしかしてこれって、恋愛フラッグ立ってるってヤツじゃないですか?
円香先輩のこと、密かに想ってる人がいるんですよぉ!
先輩、やりましたね! 私、心配だったんです〜。
円香先輩って、女っぽくないっていうかぁ、メイクをもっと可愛くして、髪もゆるふわにしたらモテ顔になるのにと思っていたけど、言えなくてぇ……」