オトナな部長に独占されて!?
私の横に立っているのは、第二営業部の係長。
なぜか眉をハの字に傾け、一枚の紙を渡し、物凄く言い難そうにこう言った。
「高村さん、ええと、このクライアントさんも担当してもらいたいんだけど……」
A4紙に簡単にまとめられていたのは、一件の顧客情報。
社名は、栄繁(エイハン)ホールディングス。
有名居酒屋チェーンを全国展開している会社で、その店舗数は今も増加中。
栄繁さんは、新店舗の開設や古い店舗のリフォームに、5年前からうちの会社を使ってくれている大事な大口顧客だった。
そんな栄繁さんを、私に……?
確か、第三営業部の高橋課長が担当してたよね?
課長クラスのクライアントを私に任せるはずかないと思うので、A4紙を突き返して、つい言ってしまった。
「係長、冗談はやめて下さい」
「いや〜、冗談じゃないんだけどさ、そう言われるのも分かるよ。課長担当のお客さんだしね。
それに、高村さんは今すごく忙しいから無理だって言ったんだけど、葉月部長が、やるかやらないかは高村さん本人に判断させろって……あっ!
やべっ、今の聞かなかったことにして。
と、とにかく、高村さんじゃ無理だよね?
3年目の女の子に何言ってんのって感じだよね?
ごめんな、僕から断っておくから……」