オトナな部長に独占されて!?
高橋課長はまだグチグチと、葉月部長について喋っていた。
自分より20も年下の上司が、心底鬱陶しいみたい。
その愚痴を耳にしながら、葉月部長の顔を思い浮かべ、唇を噛み締めた。
やっぱり他の人に頼るのは嫌だ。
居酒屋チェーン店の5店舗も、私が今抱えている他の案件も、全て自分の力でやってやる。
これは葉月部長からの挑戦状。
私のことが嫌いだから大変な仕事を押し付けてくるのだろうけど、それに負けたくない。
勝負を真正面から受け止めて、全て完璧な成果で返してやる。
私は負けない。
男に……葉月部長なんかに、負けてたまるか!
ノートパソコン片手に会議室から出て、営業部のフロアに戻ってきた。
時刻は20時。
まだ社員の3分の1は残業中で、葉月部長も残っている。
ひとりの男性社員が葉月部長の側に行き、ファイルを見せて何かを相談しようとしていたが、部長に断られていた。
「まだ期日には余裕がありますので、それについては明日にしましょう。
皆さんの残業時間を減らす方向に進めたい。今日はもう退社して下さい」
それが聞こえて、私はまた苛立った。
『私にはこんなに仕事を回してるのに……』と思う悔しさと、
『何をされたって負けないんだから』という、怒りと気合いの混ざった感情が湧いてくる。