オトナな部長に独占されて!?



鼻息荒く、わざと遠回りして部長デスクの前を通ってやると、視線がぶつかった。


睨む私と、それを涼しげな目元で受け止め、余裕のイケメンスマイルを向けてくる葉月部長。


ムカつく……。


どすどすと足を踏み鳴らして自分のデスクに戻ってきて、やりかけの仕事に取り掛かった。


居酒屋チェーンについては、明日から走り回ることにする。

今夜は、明日訪問予定の店のプランニングを完成させないといけないから。



飲みかけで置きっ放しにしていた冷めたカフェオレを一気飲みして、マウスを掴んだ。


作成中のファイルを開いてすぐに「あれ?」と疑問に思い、カーソルを下に下に動かして……目を丸くして呟いた。



「完成してる……どうして……」



慌てて、同じくやりかけの他の4件分のファイルも開いたが、これらも完璧な仕上がりで完成していた。



頭の中が混乱してくる。

完成させたことを、私が忘れていただけとか?


いや、まさか。

幾ら疲れてぼんやりしていたとしても、そこまで分からなくなるような間抜けじゃない。

じゃあ、誰かがやってくれたということで……。


他の人の仕事を自ら進んで手伝おうとする人間なんて、第二営業部の中にはいない気がする。


それに、担当の私からの説明もなしで、こんなに完璧なプランを作れるはずがないよ。


私は作ってないし、第二営業部の社員でもない。

じゃあ、一体誰が……?


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