オトナな部長に独占されて!?



ハッとして、葉月部長を見た。


部長はコートと鞄を手に立ち上がり、退社しようとしているところ。


私が小会議室で引き継ぎを受けていたのは、2時間ほどの時間。

葉月部長なら、その2時間で5本のプランを作ることができそう。

いや、そんな神業的なことは、葉月部長しかできない。


帰ろうとしている葉月部長が、優雅な足取りでこっちに向かってくる。


モデル並みのルックスと、端正な顔。

口元に微かな笑みを浮かべ、切れ長の美しい瞳は真っ直ぐに私を見ていて……。


心拍数が急上昇し、慌てて視線を葉月部長からパソコン画面に戻した。


足音は私の真後ろで一度止まり、すぐにまた正確なリズムを刻んで遠ざかる。


私のデスクの端には、近くにある有名店のサンドイッチがポンと置かれ……。



葉月部長が何を考えているのか、全く理解できなかった。


もっと頼れとか、業務量の振り分けに問題があるとか言ってたくせに、私にどんどん仕事を回してくるし、課長の顧客まで私にやらせようとする。


その理由は、私のことが嫌いだから潰そうとしているんだと思ったのに……プランニングを手伝ってくれたり、差し入れしたりしてくれるのはなぜ?


サンドイッチの包みを手に取り、カフェオレの差し入れも部長だったのかとやっと気付いた。


そうっと斜め後ろを振り向くと、部長の背中はドアの向こうに消えていくところ。



何なのよ……。

葉月部長は、一体、私をどうしたいの?

説明してくれないと、分かんないんですけど……。



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