オトナな部長に独占されて!?



◇◇◇


栄繁ホールディングスの仕事を引き受けてから、2ヶ月半があっという間に過ぎ去った。


正月も実家に帰らず仕事をしていたせいで、母からいつもの5倍増しで文句の電話が掛かってくるけど、それにイチイチ苛立っている暇もないほどに毎日多忙だった。



我が社の大事な顧客、栄繁さんの新店舗開発責任者は、大黒さんという男性。

不自然なほどに髪がふさふさ黒々している、60近い人だった。


担当替えで挨拶に出向いた時は、『お嬢ちゃんが? なめてんの?』と、あからさまに嫌そうにされたけど、私は怒りもなくその言葉を受け止めた。



大黒さんの気持ちが、分かってしまった。

第三営業部の高橋課長はアクの強い人だけど、仕事はできる。

栄繁さんとも5年間上手くやってきて、信頼も厚い。


その高橋課長の後任が、3年目の平社員の私。

女であることを抜きにしても、不安に思われて当たり前なのだ。


それが現時点の私の印象なのだと自覚して、大黒さんに深々と頭を下げてお願いした。



『ご心配は当然のことと思いますが、どうか私に任せていただけませんでしょうか。

持てる力の全てを投入し、必ず春の新店舗オープンを成功させますので!』


< 88 / 145 >

この作品をシェア

pagetop