片思い二年、私の恋は叶わない

 それじゃぁ、と背を向けた寧を呼び止めることができなかった。

 見えなくなった後姿。

 会計を済ませたらしい、ウェイトレスのありがとうございましたの声が聞こえた。

 …嫌われたかもしれない。

 「…好きだから、か」

 何回言っただろう。

 多分、他人に好きだからなんて言ったのは初めてだろう。

 初めてが私なんて、皮肉。

 怒ってた、もちろん意図的に私は彼をフルネーム呼びにしてる。

 嫌悪はない、ただ嫌い。

 私だって逆の立場なら気にするだろう。

 大切な人が傷ついていてそれに悩んでいて、それを知っているくせにこの場に呼び寄せようとするなんて、確かにひどい。

 「何してるのよぉ、私わぁ」

 空回りしているのがわかる。

 一言言ってやりたかった。

 だけど、何を言うつもりだったんだろう。

 恨み言でも言ってやるつもりだった。

 だけど、弱った彼にはきっと大打撃だろうし、それは結果的に寧も傷つける。

 
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