片思い二年、私の恋は叶わない
「…好きなのね、彼のこと」
寧から直接聞いたことはなかった。
だけど、言葉の中から見えるどうしようもない感情。
知っている気持ち、思う気持ち。
繰り返される助けたいの言葉の中に、好きだからと聞こえた。
寧は、すぐには答えない。
寧の言う相手は、私から見る異性。つまり男だから。
今更同性愛を否定する気はない。
はじめこそ勝てる戦いだと意気込んだりもしたけど、寧から聞く話はどれも勝ち目は愚か指の先すら入り込める隙がないから。
寧の思い人。
小野田 翠(おのだ すい)なら、私も会ったことがある。
長身細身で、細目。
鋭い切れ長の目を見て、寧がこの目に引き込まれたことを察した。
長い指先で唇に触れる癖がどこかいやらしく見えた。
目にかかる黒髪の隙間から、ふとした時にどこか遠くに向く視線に寧が胸を痛めていることを察した。
胸に落ちてくる低い声と、語尾を言い切らない独特の話し方、そのどれもが、彼には彼だけの世界があるのだと実感させられた。
そしてそこに入れるのは少数、その中に寧は入っていないのだろうと感じた。