恋愛格差
恐る恐る部屋を開けると
誰もいなかった。

諦めて帰ったのだろう。

ホッとして鞄を玄関先に置き、靴を脱ぐ。

「荷物はどうしたかな」

すると食卓にしている小さなテーブルの上に
鍵を見つけた。

私の部屋の合鍵。


よかった~返してくれたんだ。

2度目のホッ。

首を回してテーブルに座った。

ん?

テーブル横のテレビの前にあるのは
ゲーム機とソフト……

優のじゃん……

はぁ~
なんで忘れるのかなぁ。

仕方ないなぁ
送るか。

他に何かないか部屋をチェック。

洗面台の歯ブラシは捨てるとして
マグカップは……お揃いだからこれも返すより捨てた方がいいね。高かったけどねぇ……

あとは……クローゼットの服は
カッターとネクタイとスーツ一式。
下着と靴下も何枚かあったな。

動揺して忘れたんだろうか。
いや、アイツは動揺するタマか?

要らなかったとしても
優の持ち物は一つ一つが高価だ。
沢山はないが、良いモノを大事に大事に使う。

女以外は……

あぁそうか。

そこで自分が如何に高価で良いものではないんだと改めて気付き、
落ち込んだ。

少し乱暴に箱買いしたビールを冷蔵庫に全部入れ、
その空いた段ボールに優の私物を詰め込んだ。


そういえば優の家に置いてある私の私物……
捨ててもらおう。
いつぞや買ってもらったお気に入りのワンピースも一緒に全部。

想い出は要らない。

その事をメモに走り書きして
最後に一応
感謝の気持ちを書いておいた。

箱の入口をガムテープで閉じ
コンビニに持ってくだけ。


そして何もかも終わりだ。

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