恋愛格差
私、ピンチです!


店を出て、私はぼんやり歩いていた。

ゆかりさんは「憎い」と言っていたけれど、本当は「好き過ぎた」というのが正解のような気がする。

もちろん、やり方は間違っていた。
でも、優を手放すことは考えられなかったんだろう。

やっぱりやり方は間違っていたんだけど。

子供の恋愛ってややこしい。

気持ちが先走って、冷静な判断ができなかったんだろう。

ゆかりさんはあの後、ビデオなんてすぐに処分してあるし、出回ることは一切無いと言った。

それが目的ではなかったのだし。

でも…………優はそのものの存在よりも過去の事実に傷つけられている。
一刻も早く、ゆかりさんの気持ちを伝えてあげたい。

だけど、私が過去を知ってしまったことを伝えることにもなる。
それは優にとって身を切られる思いだろう。

どうしよう……

そう考えながら自宅の鍵を差し込んだ。

が、入らない。

あれ?

何度かチャレンジしてみるが入らない。

鍵間違ったかな?と思い、なんとなくノブに手をかけると

ドアが開いた。


一瞬で背中に寒気が走る。

だめだ。開けちゃダメだ。
そうは思うのだが、すでに手はノブを引いている。

ちらっと見える室内。

ものが散乱しているように見える。

「ひっっっ!」

そして目の前が暗くなった。

腕を引っ張られ背後でドアが閉まる音がする。

気がつけば誰かに抱き締められていた。


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