恋愛格差
警察官が到着し、ようやく男を引き渡した優はすぐに毛布で私を包んでぎゅっと抱き締めた。
優の体も私も震えている。
「ごめん……こんな姿のまま居させて。近所の人や警察にも見られて……目は?どこがやられた?あ、救急車……!」
取り乱した優に抱き締められて初めて緊張が溶けて安堵の涙が出た。
「すぐる……」
「ごめんな……もっと早く助けてあげられたら……目は……」
「……ありがとう……大したことない。大丈夫だよ……」
流れ出た血の量の割に痛さはまったく感じなかった。
興奮していてそれどころではない。
死を覚悟したのはついさっきで、私には今の状況が現実とは思えなかった。
バタバタと聞こえる足音や、現場の写真を撮るシャッター音。この部屋で聞いたこともないたくさんの話し声。
それら全てが遠い夢のようにフワフワとしている。
一度も血にまみれた顔を上げられず、優の胸にのめり込むようにしがみついていた。
優はそんな私をきつく抱き締めて頭のてっぺんを何度も口付けながら
「ごめん。ごめんな。」と何度も謝っていた。
「あの……救急車が到着しましたけど」
と言われるまでずっと部屋の片隅で抱き合っていた。