恋愛格差
甘えん坊彼氏
私の怪我は眉の上、髪との境目を二センチほど薄く切っただけだった。
「女の顔を切るなんて!いや、そういう問題じゃないな!あいつ、殺してやりたい!」
なんてずっと優は言っていた。
私としては犯されて殺される予定(?)だったのが、これしきの怪我で済んで良かったと思っている。
私にとっては優が助けてくれた……という事実が何よりも大事。
あの後、警察の事情聴取も現場検証もすべて優が付き添ってくれた。
「透子を一人にしておけない」
他人(強姦魔と警察)の手でぐちゃぐちゃにされてもう入りたくもなかった私の部屋は優に解約され、
そして優の部屋に問答無用で連れていかれた。
服も化粧品も全て優が新しく用意してくれた。
ものすごい金額だったと思うのに、1円も受け取ってくれない。
「俺が透子の物を買うのは当然。ゴミひとつでもあの部屋からは持ってこないからな。」
引っ越し前に部屋の片付けに行ったのも優。
私には何もさせなかった。
事実、またあの事件を思い出しそうだし、よく考えたら半裸の淫らな格好をご近所に見られたのだから戻りづらい。
優がやってくれて本当に助かった。
優にもらったアクセサリーは置いときたかったなぁ
なんて思ったけど、それを言うと優は同じものをすぐ買ってきそうだし、
まぁお気に入りのワンピースが優の家に残っていたからヨシとしよう。
とはいえ、こんな風に思えるのは事件から1週間経ってから。
アラサーの私だって、さすがにあんなことに遭遇したら引きずるに決まってる。
優はこの1週間、退職前にも拘らず有給を取ってくれて
私の心のケアに当たってくれた。
それはもう、甘々のベタベタで。
事件には一切触れず、ただ優の自宅で3食昼寝つき。
夜は優に抱き締められて朝までぐっすり眠れた。
外出は禁止されたけど、まだ少し脅えていた私にとっては嬉しかった。
『30分で帰る』
今日から出社した優からメッセージが届いた。