恋愛格差

「そんな……そんな終わりみたいなこと言うなよ……」

「終わりにして仙台に行っちゃうのは……優でしょ?」

私たちの距離はまだ10センチ。
隙間を埋めるようなこの1週間を経ても、この話になるとまた隙間はできる。
この隙間を埋めるために挑むんだ。

失敗すれば、そこには乗り越えられない高い厚い壁ができるのだけれど。

「優に傷ついてほしくない。だけど、私にはこうするしか出来なかった!

…………ゆかりさんに会ったの。あの日……」

優は私から目を逸らさなかった。
そして静かに笑った。

「…………知ってたよ。」

「……え?…知ってた?」

「3日前、会社に電話してきた。透子と会ったかって。
俺はもう、彼女とは会いたくなかったけど、透子の名前が出たから会った。数分だけど。
そこで俺に謝ってくれたよ。昔のこと、最近のこと、透子に話したこと。」

優がペットボトルを持ち上げ、一口飲むのを見ていた。

「ショックはあったけど、その時はもうどうでもよかったから適当に流した。」

「……どうでもよくなったの?」

「まぁ……ね。だって、襲われてる透子を見たとき、生きてる心地がしなかった。
そう考えれば、あんな昔のことはどうでもいい。
昔の俺の裸や、俺のセックス?
今やネットでも流せるけど、大したことじゃない。

俺は……俺は男なんだから……。」

そう言って私を見つめた優の頬には涙が光っていた。

「画像は悪いし、俺かどうかもわからないだろうって。
まぁ10年も経ってるしな。あれはもうすぐに処分したって言ってたよ。ゆかりさんの言葉を信じれば、だけど。
ただ、昔の俺の本気を弄ばれたのは辛い。
ゆかりさんからも聞いたと思うけど、俺からの話も聞いてくれる?」

「もちろんだよ。全部教えて。優の全部……」

そう言って優を抱き締めた。

「透子……好きだよ。」

そう言って、彼はゆっくり話始めた。
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