恋愛格差
「今日はスッキリした顔してるな!
吉岡くんとデートでもしたかぁ?」

ややKYの発言が目立つ社長の甥っ子の三池さんが
缶コーヒー片手に寄ってくる。

この人は10才も年上なんだけど、
入社してから5年の付き合いと
社長と同じ気さくな性格の為、
良き友達であり、相談相手であった。

「はぁ?違いますよ~別れたんですよ。」

と私も気さくに返すと「は?」と怪訝な顔をした。

「スッキリした顔してますか?」

「……いやぁ…」目が泳いでいる。

「いいんですよ。スッキリしてますから。」

事務所がシーンとなっている。


そう。
吉岡優はこの会社かお世話になってる大手ゼネコンの営業だ。

つまりここは優の会社の下請け会社のひとつ。

以前、優が現場に就くことがあって、
その場で私たちは知り合った。

付き合い始めの頃に優が言いふらしたため
会社公認の恋人になってしまった。


「いつ?お前が振ったの?」

「言いにくいことをさらっと言える三池さんを尊敬します……

土曜日ですよ。
ちなみに……う~ん……ふられたのかな。」

三池さんは何か考えてる素振りで

「でも……落ち込まないのな……?」

「そうですね。今更ですね。」

「おはよ~ございます~なんの話ですか?」
ミキちゃんが入ってきた。

やや小さめで愛想よく、この事務所に似つかわしくないフワッフワのかわいい女の子。
すでにこの会社のマスコット的存在。

「お前なぁ~たまにはこいつ見習って
早く来て拭き掃除とかしてみろよ。」

三池さんがミキちゃんを小突く。
「ヒロ兄。朝礼始まるよ~」

可愛がられているミキちゃんに小言を言うのは
従兄妹の三池さんと、父親の社長だけ。

でもミキちゃんはかわいいだけじゃなく、素直で仕事だって頑張る子だ。
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