恋愛格差
レストランから出れば空気は透き通っていて、都会のビルの間でも星が見えた。
「星、意外とたくさん見えるんだね。綺麗……」
「そうだな。透子のが綺麗だけど。」
胡散臭いゲロ甘なセリフも優が言うとしっくりくるんだからホントかなわない。
もともと人懐っこい性格だったのだが、この一週間でほぼ溺愛体質になった優。
道端だろうが関係ない。
腰に回した腕を引き寄せ、スマートにチュッと軽いキスを唇に落とした後、
「透子に触れてる時が一番幸せ」
ティーン少女漫画張りの甘い台詞を言う男前と
それにポーッとなってされるがままになったOL。
実のところ私ももう28才だ。アラサーだ。
優の思い通りに事が運ばれてるのが少し悔しくて、今回も反応してしまう。
「ゆかりさんとはどれぐらい触れあったの?会えばシテたって言うことは相当な回数よね?」
「え?」
余裕の王子さまスマイルを振り撒いていた優は、私の腰にある手を緩めた。
「ゆかりさんは素敵だった?」
「そ、そんな……昔の話で……」
しどろもどろになる優の顔は青白い。
もはや王子さまの面影はなかった。
我慢できなくて吹き出してしまう。
「と、透子……?」
眉を八の字にして心底困った顔をさせられるのは私なんだ。
そう思うとしてやられた気分もスッキリ飛んでいってしまう。
「仕返し。だって、結局は優の思い通りなんだもん。」
笑いながらそう言うと、優はホッとしながらも困った様子でこう返す。
「俺には思い通りにならないことばっかりだけど?透子はそれの筆頭だよ……」
とハァーっと大袈裟にため息をつき、額に手を当てた。
「嘘ばっかり。」
「ほんと。ちゃんと退職させて、仙台に連れてって、婚姻届だして、そこまでしてもどこかへ行っちゃう可能性大。苦労するなぁ、俺。」
「ちょ!そんな訳ないでしょ?私がフラフラしてるみたいに言わないでよ!」
「透子は怒りん坊だからさ。」