恋愛格差
テレビ前の床に座った優とテーブルを挟んだ真ん前に座った私。

「で、どうしたの?忘れ物なら送ったわよ。」

「え?送った?何を?」

「何をって……ゲームとかスーツとか。今日ぐらいに届くと思うけど。」

「……どういうこと…?」

カワイイ天使様の眉間にシワが寄ってますよ…

「どうもこうもないでしょ。優の家にある私のモノはのは捨てていいからね。
あ、あのワンピースは出来たら…送ってほしいかも…」

可愛気がない私が少し上目遣いで頼んでみた。

しかし、私の言葉が届いてないのか優は体を震わしていた。

怒ってる?怒ってる?
まさかDV……なんてことないよね。

冴えない女に自分が振られるのが耐えられなくて……よくあるドロドロ昼ドラじゃないか……

身構えた私にいつまで経っても拳は届かず、
しばらくして聞こえたのは「や…よ……」

「……え?」

「イヤだよ。俺はイヤだよ。別れない!捨てないでよ!」

えぇ!
ごねられるのは何となくアリかと思ってたけど
捨てないでって……

唖然として優を見ると、やはり泣いている。

で、やっぱり涙も泣き顔も綺麗でいいなぁと思った。

「透子……捨てないでよ。俺、透子がいないとダメだよ!」

「いやいや、待ってよ……!
捨てるって何?
優を解放してあげるってのに、私が悪い女みたいじゃないの!」

「開放……?」

「そうよ。これで誰とイチャイチャしたって大丈夫。彼女のご機嫌取ることもないし、誰に遠慮も要らない。浮気男の称号なんて要らないでしょ?」

「……」

「むしろ男前で仕事できて、女受けも扱いも良かったら
それは男としても名誉あることなんじゃないの?

でもさ、彼女や妻がいたら女関係でゴチャゴチャしてたら査定に出世に響くよ。

だから彼女なんて要らないんだよ、優には。」

「……」

「優がこの人だって思える相手に出会える時まで、自由を満喫しなよ。」

おぉ……良いこと言った?纏まったかなぁ……

「あ、でも鍵は返してくれてありがとね。ちゃんと受け取ったよ。私が返した鍵は持って帰ってくれた?」

「……か……ぎ……?」

虚ろな目で私を見る。

なんだか怖い……んですけど…

ポケットを探り青いキーケースをゆっくり出す。
そこに鍵がいくつか連なっている。

1つを指差し、
「これは透子の部屋の鍵……」
と宣った。

「……は?」

「一昨日置いて帰ったのは俺の部屋の鍵」

なんだって?

慌ててキッチンの引き出しにしまった部屋の合鍵を
自分の家のドアの鍵穴に入れてみる。

ま、回らない……

鍵を持ったまま優の横へ立ち、
鍵をヤツの目の前に置く。

そして

「返して」とキーケースにぶら下がった鍵の返還を求めた。



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