恋愛格差
「やだ。」

「返してよ!」「返さないし別れない!」

堂々巡りだ。
何を言っても「イヤだ」一点張り。

そこでふと疑問に思った。

「合鍵持ってるのになんで入ってこなかったのよ?あんな真似までして。」

「透子がめちゃくちゃ不機嫌なのわかってんのに、
勝手に入ったら火に油を注ぐようなもんだろ。」
と言ってのけた。

そこは空気読めるわけね。
だったら今この空気も読んでもらおうじゃないの。

「とにかく鍵は返してくれないなら鍵ごと替えるから!

そしてもう別れて!ほんとに!」

「なんでだよ。なんで!」

「理由は昨日言った!」

「俺が好きなのは透子なんだよ。透子だけなんだよ……」


両頬を挟むように大きな手で包まれる。

ドキッとした。ドキドキした。始めての時みたいに。

そして動けない私に
唇に触れるだけの優しいキスをした。

あぁ
いつもの許すパターンに似てる……

でももうダメだ。
私はこの男がやっぱ好きすぎる。
だからこそもう耐えられない。
不釣り合いな自分をこれ以上嫌いになりたくない。
そしてこの男の毎回の浮気が
私ではダメなんだと証明しているんだ。

気がつくと涙が頬を伝っていた。

「とー…こ……泣かないで……」
頬を包んだまま私の涙を唇で拭ってくれている。
自分も泣いてるくせに。

甘い甘い優のキス。
二人でいるときはいつも蕩けさせられた。
でも忘れなくては。前に進むために。

「優……私を好きなら別れてよ…お願い」
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