恋愛格差
お見合い写真。

上流階級でもあるまいし、今時こんなんあるか?

と思ったが、そこに写るやや緊張した面持ちのその男の人は

結構かっこよかった。

優を見慣れてるせいか、そんじょそこらのイケメンにときめくことはない。

でも優と別れた(ハズ)今、
新たな出会いの予感?に心が動いた。

ちょっとだけ「いいな」と思った。

「お母さん!これ、私に?」

期待いっぱい。
乗り気で聞く。


「フフフ~気付かないわね~」

「え?」

「これねぇ、楠町の佐藤さんちのカズくんよ。」

カズくん?

「あんたの二つ上の。昔よく遊んでたでしょう。」

昔の記憶の引き出しをアッチコッチと開けてみる。

「あ!鼻タレのカズ!?」

「そうそう!」
 
もう一度写真をじーっと見る。


これがあのカズ……?

確か幼稚園と小学校が一緒。

二つ上のお兄ちゃんのくせに
いつ見ても泣いていて鼻水を垂らしていた。

最初はその様子が悲壮だったので
声をかけたり慰めたりしていた。

私は毎日を子供らしく楽しく過ごしているのに、
毎日泣いているカズを見ると
なんだか可哀想になったから。

しかし、毎回毎回理由を聞けば聞くほど
ムカついてきた。

兄ちゃんが自分のプリンを食べたのだとか
お母さんが朝起こしてくれなかったとか
学校に新しい消ゴムを持ってったら友達に先に使われてしまったとか……

思わず舌打ちをしてしまいそうなくだらない理由をカズは惜しげもなく私に説いてみせた。



小学校に上がる頃には『カズくん』から『カズ』になり、
いつも鼻をグズグズいわせて涙ぐんでるとこから『鼻垂れカズ』になった。

私の記憶はそこぐらいまで。
だんだん女の子とつるむようになったし、
習い事も始めるようになって
ちょっと家が近いだけのカズには会わなくなった。


「しっかし、変わるもんなんだなぁ~」

スーツを来てすっかり大人の雰囲気を漂わせた写真に、
昔のカズの姿との共通点を探していた。






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