恋愛格差
次の日朝礼ギリギリで会社に就くと
ミキちゃんが慌てて駆け寄ってきた。

「遅かったじゃないですか!なんで今日に限って遅いんです!?」

朝から勢いのあるミキちゃんに一歩引きながら

「今日、実家から来たから遠くって……何かあった?」

「もう!さっきまで吉岡さんいたんですよ~」

また優?
何度も会社に来て……困ったなぁ。

「昨日家に帰ってないって。どこにいるのか知らないかって。何かあったんじゃないかって。
私に電話してくれないかって。
電話したのに出ないし!」

「あ、思い立って実家へ行ったから充電器無くて。朝方切れてたわ。」

「もう!今すぐ充電してください!そして吉岡さんに連絡して!メチャクチャ心配してたから!」

「いやもう朝礼始まるし。仕事仕事……」

「そうそう。仕事だ、ミキ。」
この事務所に似つかわしくない低い声が響く。

「社長……」「お父さん……」

いつもの好好爺のような穏やかな笑顔ではなく、
威厳のある気難しそうな顔をして社長は椅子に座っていた。

いつもニコニコしている人が怒ると怖い。
私が知る限り、社長が女性にこんな顔をするなんて見たことがなかった。

「藤原くん」

「っ…はっ、はい!」

「連日、吉岡くんが来てるようだけれど、公私の区別はつけてください。
会社中が浮き足立ってるからね。」

「はいっ!すいませんでした!」

伸ばしていた背筋を90度曲げて頭を下げた。
社長が部屋を出ていくまで。



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