恋愛格差
パタンとドアが閉まる音がして
そうっと顔をあげる。

「災難だったなぁ」

三池さんが笑っていた。

「ごめんね、透子さん……透子さんが怒られちゃって……」

ミキちゃんはシュンとして座っている。
まさか女子に甘い父親が怒るとは思ってなかったのだ。


「いやいや、私が悪いから。確かに私情を持ち込んではね……」

「ま、持ち込んでんのは吉岡くんなんだろうけどね。」

そうなのだ。
私がフラれたことにしているのに、これでは全く意味がない。
彼は何がしたいのか。
このままでは下請け会社から自社にまで噂が飛び、自分の社会的地位が揺らぐというのに。

「ご迷惑をお掛けしました。」

ペコッと三池さん始めその他の方々にお辞儀をして謝った。

「迷惑なんかじゃないよ。なかなか興味深いよ♪」
とか
「愛されてんね~!」
とか
「詳しく教えてよ!」
とかいろんな人にいろんな事を言われた。

みんな好意的で安心した。
でも

「社長の言ってることは尤もだし、きちんとしないといけませんね……」
と椅子を引きながら三池さんとミキちゃんだけに聞こえるように言うと

「あ、あれね。気にしなくていいよ。
さっき、吉岡くんがお前の携帯に電話してくれってお願いしたときに、
ミキの手を両手で握ってたのが社長の逆鱗に触れたんだよ。」

ミキちゃんに「なっ?」って同意を求め、ミキちゃんも頷く。

「もう、吉岡さんにちょっとキュンってなっちゃいましたよ~危ない危ない……」
頬を両手で覆い、にやけている。

吉岡優
ほんとに節操がない男。

誰にでも媚を売ることができる。無意識に。
そのおねだりすらスマートかつ甘々。

女子なら間違いなく心を持っていかれるだろう。

ミキちゃんだって惚れはしていないものの、
完全に優贔屓だ。

私の方が世話してるのに……くそぅ。

「それにしてもほんとに愛されてんね~」
「いやいや、愛されてたらあんなに浮気はあり得ませんよ。」
ニヤニヤして言う三池さんをピシャリと制した。


しかし、優とやっぱりもう一度話をしないといけないなと思った私は
着信拒否にしていたのを一旦解除して、

『もう、会社には来ないで。
もう一度話す機会を設けるから。』

とメールしておいた。
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