恋愛格差
「わっっ!」「ひっっぃ!」

耳元で叫ばれ、心臓が飛び出すかと思った。
バクバクの心臓を手で押さえ、睨み付けるように横を見る。

「驚いた?」

悪戯が成功した小学生かと思うほど、喜んでいるカズが居た。

今のシリアスな私の心情とは真逆のカズの雰囲気に
ムカついた。

「あんた……子供か…!」

「偶然だな!俺は飲み会の帰り~♪」

そう言えば少し酒の臭いがする。しかも陽気になっている。

いい気なもんだ。私は一人寂しく彼氏の浮気調査をしてるってのに……

完全な八つ当たりだけど、本当に腹が立つ。カズのくせに!

「カズ!飲みに行こう!」
と腕を引っ張る。
「えぇっ?今から?!いや、今日はダメだよ!もう飲めないし!」
とその腕を引っ張り返される。

「……私が落ち込んでるのに……?帰るの?あんたは帰るの?
幼馴染みを放っておいて……こんなっ!」

「透子?!」

駅の改札近くで涙声になった私に、カズは焦りだした。

私の正面に立ち、「どうしたの?透子……なんかあった?」子供をあやすように、なだめ始めた。

「……お茶でもいく?」「いい!帰んなよ!」
カズに慰められてるなんて自尊心が許さない。

「えっと……じゃあ……」
「カズ、ホテルいこ!」
「……はい?」
「だーかーら、ホテル!行っとくけど変なことしたらぶっ飛ばすからね!」
「……だったら何でホテル…なのかなぁ?」

いいの!
なんにもなくてもき既成事実作ってやる!

もう、優にやきもきするのは嫌だ。

優が浮気してるかしてないかは別として、
さっきのスレンダー美女やら、顔の見えないお水の女。
私が出くわしたユルフワのカワイコちゃん。

どの人をとっても私は太刀打ちできない気がして。

だったらワタシが浮気すれば、そんな卑屈な気持ちは湧いてこないような気がする。

所詮、お互い様だよ~って余裕のある女になれる気がする。

気持ちの上だけで、優以外とそういうことは……まだできそうもないけど……





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