恋愛格差
「……だったらさ…うち、来る?」

脳内で自問自答していた私は、何を言われてるか瞬時に理解できなかった。

「そうだ!おいでよ!そこでゆっくり飲んで、話聞くよ!
明日休みだし!」

カズは私の手を握って改札を通り抜け、ホームへと上がっていく。

えぇ?カズの家で?
……いや、それはちょっと……

と思ったが、
電車に乗ったカズは思いの外昔話をしてきたので
私はまた警戒心が薄れて楽しく車内を過ごしたのだった。



カズのマンションは駅から徒歩2分。
小綺麗な茶色のマンションだった。

ここまで来といてなんだけど、男の部屋に深夜お邪魔するってのは……
ホテルに誘っときながらこんな常識的な事を考える私ってヘンな女だ。

ま、カズだし。

なんて、
幼馴染みの気安さから部屋まで入ってしまった。
部屋の中は整っていて、私の部屋より断然きれい。

女子力の無さをここでも痛感した。

「コーヒー?ビール?ワインもあるよ~」
キッチンから聞こえる声。

「じゃあ……とりあえずビールで。」

缶ビールを二つ、リビングのローテーブルに置いて、
カズはまたキッチンに戻る。

「広い……ね」

「えー?何がぁ?」

キッチンでなにか食べ物を用意しているらしく、ガチャガチャ音が聞こえてくる。

「いや……この部屋。いいところに住んでるんだね。高給取りなんだぁ。」

リビングとそこに続くキッチンをぐるっと見回した。
このリビングだって15畳はあるし、リビングの奥には2部屋あるようだ。
マンションだって新しそうだし、駅近だし。

優だって私だって1DKのオンボロマンションで精一杯。
思った以上にスペックが高かったのか…鼻垂れカズは。

「あぁ、これはね~……」とカズの言葉と玄関ドアの音が重なった。

ガチャガチャン!「ただいま~」

え?と思ってそちらを見ると玄関とリビングを間仕切っているドアが静かに開いた。

「…………」
「…………」

そこに立つ人と私は、互いに異星人に出会ったかのような唖然とした表情で見つめ合う。

「あ、さっちゃんお帰り~♪」

さっちゃんと呼ばれた異星人は、さっき優の隣で歩いていた女だった。



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