恋愛格差
次の日の朝イチ。
休みの日に恋人たちの時間を邪魔してはいけないと早々に帰宅することにした。

「お世話になりました……」
「週末、会社から一緒に出たらメールするわね!」
と楽しそうに手を振った幸代さんと別れ、
カズのコンパクトカーで送ってもらう。

シートベルトを締めながら
「俺、家まで行って大丈夫?いや、大丈夫だな。あっちが浮気してんだもんな~」

「ちょっと!浮気浮気言わないでよ!今回はホントかどうかわかんないんだから。」

「今回はって……」
悲しそうに眉をハの字にしたカズを見ながら思う。

だよね……矛盾してるよね。
黙ってしまった私にカズは慌ててハンドルを握った。

「よ、よし!出発!」
スムーズに車を出して大通りに出ると、
カズは真面目な面持ちで

「透子、絶対別れろよ。」
と言い出す。
「絶対って……浮気だったらね…」

「そいつ、前も浮気してたんだろ?」

「あぁ…まぁ……」

「今回が違うとしても、今後絶対するから、浮気。そういうもんだろ。」

チラッと横を見ると、ハンドルを握った手が拳になってる。

「そう……そうだね。」

おまけに前を向いたまま眉間に皺まで寄せて。

そんなカズが微笑ましくて、つい、「ありがとね」なんてお礼を言った。

「!?お礼言われることじゃねーし……さっちゃんの残業が少なくなった方が俺も嬉しいし、な!」

絶対そんな理由じゃない。

照れてそんなことを言ったカズに心がさらに暖かくなった。

私にはこんなに親身になって心配してくれる人がいる。
多少の好奇心が入っていたとしても。

それが純粋に嬉しく思った。


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