恋愛格差

黙りこんでる私の横でカズも黙ってコーヒーを飲んだ。

「どこか座るとこあればいいのによ～」
なんてたまに言うのはこの沈黙が居心地悪いから。

「ごめんね。付き合わせちゃって……」

「いや。さっちゃんに付き合ってもらってるようなもんだし。」

「そういえば、幸代さんとの馴れ初めを教えてよ。」

「えぇ……？」
照れ始めるカズ。

「照れなくていーから早く。」

「おー……」
頭を掻きながら話始めたその内容はこうだった。

いわゆるナンパ。
カズが同僚と呑みに行った居酒屋で、隣のカウンターに一人で呑んでたのが幸代さん。

カズの連れが美人でスタイリッシュな幸代さんに声かけただけなんだけど、幸代さんは鼻にもかけなかったらしい。

だろうな。
ナンパで釣れるほど気軽さは無さそう。

カズは横で見てるだけだったんだけど、あからさまな拒絶の態度をする幸代さんと酔いがまわって饒舌になってくる連れにいたたまれなくなって
「帰ろう」と言い出した。

ことなかれ主義(平和主義？)のカズらしい。

『俺、もうちょいこの女(ひと)と呑んでく。』
『じゃあ……』
と、財布を取り出した時、

『お勘定してください。』
と、幸代さんは自分の支払いを終えてさっさと店を出ていった。


「ほんと、あのときは何しに呑みに行ったんだか。気まずいし、つまんないし。
でも、あの凛とした姿に惚れ惚れしたね！」



カズも店を出て、何となく早足で駅に向かうと彼女が見えた。

『あ、あの！連れがすいませんでした！』
走り寄って頭を下げた。

『どうってことない。』


「そこにまたキュンときたんだよね～」
「カズ、完全にMだね……」
「強い女はかっけーよ！ほら、初恋もそうだったしね！」

ね！って言われても……照れてしまう。

「カズに比べたら女はみんな強いんじゃない？」
「ひでー……」