恋愛格差
私とカズは自答販売機の影で様子を見ていた。

「よし!」
幸代さんが勢いよく拳を作る。

「今から呑みに行こう!ね!奢るよ!」

「いや……俺は……」

「いーからいーから。それとも奢ってくれる?今日も手伝ったしぃ?」

「すいません。今日はもう手持ちないです……」

今日はもう……?
週末なのに?断る口実か?

「……ふーん。だったら私が奢る。行こう!先輩命令だ!」

「彼が家で待ってるんじゃないんですか?鎌倉さんも毎日遅いのに。」

私はカズを見た。
ウンウンと頷いている。

「いーのいーの。」
「俺も彼女が待ってるし……」

ここにいます。

「今日ぐらい付き合って。いいでしょ。そんな顔して会いに行っても彼女は迷惑だよ!エッチもできないでしょ!」

な、何を言い出すんだろう!
隣のカズがモジモジしている。
照れんな、バカ!

「やっば、迷惑かな……」
「当たり前‼そんな辛気くさい顔して。行くよ!」

腕を引っ張られ、近場の居酒屋に入っていった。

私とカズは唖然としたまま、そこに立っていた。

「ど、どうする?」
カズは居酒屋の入り口を見たまま私に問いかける。

どうしよう。
店には入れない。テーブルの配置もわかんないし、優に気づかれずに話を聞ける場所に案内してもらえる可能性はかなり低い。
幸代さんにあとで話を聞けばいいかな……?

「私たちも別の店で食事する?カズ、何も食べてないでしょ?」

「……え?いいの?…でも…」

私はさっき幸代さんが優にやってたみたいにカズの腕を引っ張って、チェーンの居酒屋に入っていった。

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