恋愛格差
信じられない

と言うように私を見つめる優。

だけど私も信じられない。
こんな風に彼氏の後をつけて、それをネタに半泣きで詰め寄る私。
そして説明もしてこない嘘ばっかりの彼氏を。

「一人で入ってったよね、お店に。」

私を見つめるその綺麗な瞳も虚ろになってくる。

「部長に連れていかれたなんて嘘だよね。」

「…………」

「香水の匂いも気付いてた。」

「……透……」

「どうして嘘つくの?」

「……」

何も言わないで黙ったままの優に痺れを切らせてしまう。

「ラウンジかスナックかキャバクラだか知らない!でも嘘つかれるんなら言ってくれた方がいい!
いっつも仕事してるんだから、息抜きぐらいでゴチャゴチャ言わない!
何にも私に言えないのっっ!?」

荒立てた声は私の声じゃない。
お腹の底から出た自分の声に反応した様に
私の気持ちも膨れ上がってくる。
止まらない。

「いつもいつも私に知らないところで優は勝手にやってて!
遊びや浮気じゃないなら本気ってことでいいのよね!」

アルコールのせいもあるのか、息切れがしてくる。

「透子……違うんだ…息抜きなんかじゃ……浮気なんかしてない。」

この期に及んでまだ否定する優をギッと睨み付ける。
「だったら誰?ゆかりさんって。」

「あ…………」

そしてまた口をつぐむ。

「私には言えないのよね。毎週通ってる理由も、彼女が優とどういう関係なのかも。」

「……透子は……俺の彼女……だろ?
俺は透子を裏切るようなことは何1つしてない……」


ーーー


まさかそんな返事が返ってくるとは。
つい笑いが込み上げてくる。
それは「何も聞くな」というのに等しい。
どんなにバカにされているのか。

「たいした関係じゃないなら彼女に言えるのに、言えないってことはそれなりの関係だよね。

……私は優がここに帰るようになってから職場の飲み会だって断ってきた。
優が嫌がるからカズ……幼馴染みにだって会わないようにしてた。
優が遅くて話す時間も無くたって、我慢したし。

……でも私が説明を求めた事に、そんな風に返されたら!」


大きく息を吸って吐くと同時にキッパリと告げた。

「優を信用できない。
信用できない人とは一緒にいられない。
……出ていって。」


大きく開けたその瞳が悲しそうに揺れた。

私の横をフラフラと通りすぎる優の背中が
今まで以上に小さくなってたなんて
私には気付かなかった。

あまりにも自分が受けた傷が大きすぎていたから。



< 65 / 124 >

この作品をシェア

pagetop