恋愛格差
優のいない私は生活面でかなり怠惰だ。

ここ2、3日は、ご飯はコンビニかスーパーの惣菜。
家にいる時間はテレビを見る気にもなれず、
缶チューハイを飲みながらボーッとしている。

ボーッと優のことを考えている。


最近の出来事じゃ腹が立つばっかりだから、
できるだけ前のことを。

優にはじめて声をかけられたこと。
優とはじめての食事。
優とはじめてのキス。
優と……

楽しくてドキドキした記憶はちゃんと残ってる。
それもそうか、一年も経ってない。

ごろんとベッドに横になる。

私は間違いなく幸せを感じた筈だ。
初めての浮気を知るまでは。

ちゃんと見てくれてたのかな。
私のこと。最初ぐらいは。
それとも最初から……

不意に視界が揺らいだ。

泣けば少しでも楽になる。

明日は今日より楽な筈だ。

実を言うと昨日までは
優が帰ってくるかも
ちゃんと説明してくれるかも
と、期待半分苛立ち半分で待っていた。
週末だったし、一日中。

でも、連絡は一切無い。


浮気がバレた時だって
私が別れを切り出した時だって
優はしつこいくらいに私にすがってきた。
それはもう言い訳も聞いたし優の涙だって何度も見たし。

泣いたり怒ったり宥めてみたり……
それこそあらゆる手を使って頑なな私を籠落してきた。

でもあれから帰ってこなければ、電話も鳴らない。


優の私物をいれた白い紙袋がユラユラと見える。
今週、取りに来ないなら来週始めにでも荷物を送ろう。

そう決めて、あとは涙を流れるままにしておいた。

「好きだったよ、優。どんな浮気者でも……」

流れる涙の量が多ければ多いほど先に進める気がしたから
今日は気の済むまで泣こう。

そして、週明けからは元気に働こう。

その日、涙が枯れたと思えるまで静かに泣いた。


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