恋愛格差
目が腫れてる午前中は家の掃除やら洗濯やらで時間が過ぎ、
午後イチで着替える。
うん、大分マシになった。
鞄を持っていざ買い物へ。
玄関ドアを勢いよく開けた。
ハズなんだけど開かない……
何かが向こうから押している。
もう一度思いっきり押してみた。
するとズズッとなにかを引きずるような音がして、呻き声が聞こえたと同時に空いた隙間のドアに手が見えた。
「ひっっ!」
驚いてノブから手を離すと
ドアのしたの方からスーツ姿の優が半目を開けて覗いていた。
「…うぅ……とーこ…」
貞子ばりの優の様子に呆気にとられ
一瞬昨日の事を忘れていた。
「すぐ…る…」
ビックリして玄関にぺたんと座り込んだ。
のそのそと立ち上がり
ヨレヨレのその様子は
まさか……玄関先で寝てた…?
「な…なにやってんのよ…」
玄関まで入ってきた優は頭を掻きながら
「え~…だって透子電話にも出てくれないし…出てくれたと思ったら怒鳴られるし…昨日あの後出張先から帰ってきたんだけど、深夜で。
怒ってたから入れてくれないだろうなぁと思って座り込んだら寝ちゃってた。」
寝ちゃってたって…
「…冬じゃないからいいものの…って!なに入ってんのよ!入らないで!」
靴を脱ごうとする優を阻止する。
すると靴を脱ぐのを止めて
まるで捨てられた子犬のように悲しそう~な目をして私を見る。
キュ~ンって声が聞こえてきそう。
でも、私は昨日までの私じゃない。
「昨日、言ったでしょ。もう顔も見たくないし、声も聞きたくない。
お別れなのよ。
あ、私に振られたってのか辛抱ならないなら
振ったことにしといていいから。」
優は私をじっと見下ろす。
あ!そこでハッと気づいた。
立ち上がってスカートの裾を整える。
「あ、もしかして荷物取りに来た?
ごめんごめん。送ってあげたのに。
それならどうぞ入って。
でも悪いんだけど私出掛けないといけないから、
荷物取ったら合鍵で鍵かけといて。ポストに入れといてくれたらいいから。そうそう、優の合鍵…」
そこまで一気に言って、鞄の中のキーケースから優の部屋の合鍵を外し
差し出した。が、受け取らない。
優は二重で綺麗な黒い瞳を潤ませていた。
無いハズの尻尾が垂れて見える。
可愛すぎる……
なんだこの生き物は。
1年以上見続けていたのに
毎回キュンとしてしまう我が身が情けない。
気を取り直して鍵を玄関マットの上に置き、
「じゃ。ここに置いとくね。
もう会うこともないと思うけど、今までありがと。さようならっ」
玄関をガチャっと開けて出ようとすると
腕を捕まれた。
「なんで……」
振り向くと…やっぱり優は泣いていた。
その泣き顔も美しい。
私なんて泣いたらぐちゃぐちゃになって目も当てられないのに。
私の女としてのなけなしの自尊心まで粉々にして
ほんとに最後まで嫌みなヤツ…
「なんでって……それを今更言うの?
あんたには若くて素敵な女の子がいるのに?
私に関わる暇なんてないでしょ?
これ以上お互いに関わらないようにしよう。
優が振った…それでいいし、そう私も思うから。広めても大丈夫よ。否定はしない。」
「なんで俺が透子をフルの!」
知らないわよ…
そういうことにしようって言ってんのに
なんで私に執着するかなぁ。
「俺が透子を振るわけない。だってこんなに…」
また涙がポツッと彼の頬を伝う。
「好きなのに……」
……ドラマか!
もはや、現実味がなくなってきた。
いや、この男の容姿すら元々現実味を帯びてない。
もうやだ……
この三流ドラマの舞台から今すぐ降りたいのに、
私をつかんだ優の手がそうさせてくれない。
午後イチで着替える。
うん、大分マシになった。
鞄を持っていざ買い物へ。
玄関ドアを勢いよく開けた。
ハズなんだけど開かない……
何かが向こうから押している。
もう一度思いっきり押してみた。
するとズズッとなにかを引きずるような音がして、呻き声が聞こえたと同時に空いた隙間のドアに手が見えた。
「ひっっ!」
驚いてノブから手を離すと
ドアのしたの方からスーツ姿の優が半目を開けて覗いていた。
「…うぅ……とーこ…」
貞子ばりの優の様子に呆気にとられ
一瞬昨日の事を忘れていた。
「すぐ…る…」
ビックリして玄関にぺたんと座り込んだ。
のそのそと立ち上がり
ヨレヨレのその様子は
まさか……玄関先で寝てた…?
「な…なにやってんのよ…」
玄関まで入ってきた優は頭を掻きながら
「え~…だって透子電話にも出てくれないし…出てくれたと思ったら怒鳴られるし…昨日あの後出張先から帰ってきたんだけど、深夜で。
怒ってたから入れてくれないだろうなぁと思って座り込んだら寝ちゃってた。」
寝ちゃってたって…
「…冬じゃないからいいものの…って!なに入ってんのよ!入らないで!」
靴を脱ごうとする優を阻止する。
すると靴を脱ぐのを止めて
まるで捨てられた子犬のように悲しそう~な目をして私を見る。
キュ~ンって声が聞こえてきそう。
でも、私は昨日までの私じゃない。
「昨日、言ったでしょ。もう顔も見たくないし、声も聞きたくない。
お別れなのよ。
あ、私に振られたってのか辛抱ならないなら
振ったことにしといていいから。」
優は私をじっと見下ろす。
あ!そこでハッと気づいた。
立ち上がってスカートの裾を整える。
「あ、もしかして荷物取りに来た?
ごめんごめん。送ってあげたのに。
それならどうぞ入って。
でも悪いんだけど私出掛けないといけないから、
荷物取ったら合鍵で鍵かけといて。ポストに入れといてくれたらいいから。そうそう、優の合鍵…」
そこまで一気に言って、鞄の中のキーケースから優の部屋の合鍵を外し
差し出した。が、受け取らない。
優は二重で綺麗な黒い瞳を潤ませていた。
無いハズの尻尾が垂れて見える。
可愛すぎる……
なんだこの生き物は。
1年以上見続けていたのに
毎回キュンとしてしまう我が身が情けない。
気を取り直して鍵を玄関マットの上に置き、
「じゃ。ここに置いとくね。
もう会うこともないと思うけど、今までありがと。さようならっ」
玄関をガチャっと開けて出ようとすると
腕を捕まれた。
「なんで……」
振り向くと…やっぱり優は泣いていた。
その泣き顔も美しい。
私なんて泣いたらぐちゃぐちゃになって目も当てられないのに。
私の女としてのなけなしの自尊心まで粉々にして
ほんとに最後まで嫌みなヤツ…
「なんでって……それを今更言うの?
あんたには若くて素敵な女の子がいるのに?
私に関わる暇なんてないでしょ?
これ以上お互いに関わらないようにしよう。
優が振った…それでいいし、そう私も思うから。広めても大丈夫よ。否定はしない。」
「なんで俺が透子をフルの!」
知らないわよ…
そういうことにしようって言ってんのに
なんで私に執着するかなぁ。
「俺が透子を振るわけない。だってこんなに…」
また涙がポツッと彼の頬を伝う。
「好きなのに……」
……ドラマか!
もはや、現実味がなくなってきた。
いや、この男の容姿すら元々現実味を帯びてない。
もうやだ……
この三流ドラマの舞台から今すぐ降りたいのに、
私をつかんだ優の手がそうさせてくれない。