恋愛格差
コトン
グラスをテーブルに置く音がした。
「中途半端に首突っ込んじゃってごめんね。」
幸代さんを見ると、口を閉じてグラスを見つめていた。
「あとは透子ちゃんと吉岡くんが話し合うべきだと思ってて。
でも、まさか別れてるとは思わなかった。」
「優はどんな様子ですか?」
視線を上げて私をじっと見る。
「……良くも悪くも普通。
仕事は普通にしてるし、付き合いもそこそこ。
上司や後輩、取引先からの受けもいいし
昔の彼に戻ってる。
なんだろ。落ち着いてる……って感じ?」
それを聞いて、ホッとすると同時に言いようもない寂寥感が襲ってくる。
「……そっかぁ…」
グラスを両手で持って、そこに付いた水滴をゆっくり拭った。
そんな私を二人は黙って見ている。
「じゃあ良かったのかな。これで。」
二人にハハッと笑ってみせた。
「優はあのスナックにいる女性と懇意にしてたみたいです。優の携帯に電話がかかってきて……
でも、その関係は何も言ってくれなかった。
どんなに聞いても。
……聞き方が悪かったのかな?フフッ」
「……透子ちゃん……」
「でも!私の知らないとこでやってることを申し開きできないような人は……信じられないから」
カズは黙ってコクリと頷いている。
「信用できない人とは付き合えませんって……言いました。」
「……間違ってないよ。でも……」
「そうだよ。透子に嘘ついてた理由を言えないようなヤツなんだから、トーゼン!早く忘れなよ、なっ!」
「うん……」
カズはわたしの言い分を全面的に指示してくれてるのだろうが、なんだか悲しくなった。
「私は……吉岡くんが普通にしてるように見えてた。
でも透子ちゃんの話を聞いてみると、……違うのかも。違和感を感じる。」
え?とカズが幸代さんにぐるんと顔を向ける。
「なに?なに言い出すの?今、丸く収まるとこなのに……」
「あんた、丸く収めたいだけなの?」
「えぇ?いやそういう訳じゃ……でもさっちゃん……」
そんなカズを無視して話し出す。
「吉岡くんは前と違って丁寧に仕事するようになった。
一つ一つ確認しながら……みたいな。もともと雰囲気で仕事とってくるタイプなのにさ。
同僚や後輩から誘われれば断らないし。
でもそれってプライベートも大事にしてた今までとはちょっと違う。」