恋愛格差

「吉岡くん、辞めるのかも」

幸代さんの言葉が今も私の頭の中をぐるぐる回っている。
そんなことはない、と思いつつも
不安がよぎる。

幸代さんは明日「課長に確認してみる」と言っていた。

これ以上優に振り回されたくもないのでそれを待つことにしたが、
翌日、カズの家から出勤した私に三池さんが慌てて寄ってくる。

「お早うございます」
「おまっ!あ??なにその荷物?また実家から?いやっそれどころじゃねー」

唾が飛んできそうな慌てぶり。
ちょっと嫌な顔をして三池さんを見る。

「吉岡くん、辞めるんだって?なんでまた?」

デスクに向かう私の足がピタッと止まった。

「へ?」
「だから退職……ってお前知らねーの?」

三池さんと私は立ったまま奇しくも見つめ合っていた。

「えーっと……」
「ま、まさか……結婚退職……?」

んな訳ないでしょ!
って突っ込みたくなる。

そこにミキちゃんも出社してきて
「なに?なに?透子さん、辞めないでくださいよ~約束でしょ!」

「誰が……結婚退職?」
「だから!吉岡くん……?」

一同シーーーン

「あ、よかったぁ。透子さんじゃないんだ~ぁ」
あからさまにホッとしている。
「お前……吉岡くんを養えるの?」
こっちは呆れ顔。

意味が……わからない。
けど、この二人と話していても仕方がなさそうだ。

仲良くたって下請けの会社の人間に『退職する』……なんて噂が耳に入るという事は。
これは間違いなさそうだ。

……私との別れがそれに関係してるのだろうか……?

「吉岡さん、もう昇進しそうなのになぁ。なんで辞める必要が?透子さん妊娠してからでも遅くないことない?」

ミキちゃんの疑問はスルーしておくとした。

優に何があったのだろうか。
そんなに私と別れたってことが気まずいのだろうか……
それとも他に理由が……?

あ~もうモヤモヤする!
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