恋愛格差

とにかくぐちゃぐちゃだった。

記憶にないがあの後帰宅できた私は、もうとにかく怒りが収まらない。

何が悲しいって、優に単なる知り合いだと彼女の前で言われたこと。

私があそこで待ってたのを知りながら、挨拶だけで素通りしたこと。

私は心のどこかで期待していたんだ。


何時間も待ってた私を喜んで迎え入れてくれる……なんて。

でも、違った。
優はもう私じゃなくて違う人と歩き始めていた。

私なんてもう仕事上の付き合いの人。

「心配なんてするんじゃなかった……」

悔しさと悲しさでか何も喉を通らない。
勢いで開けた缶ビールも一口しか口をつけられなかった。

それでもその缶を握りしめた。

「ーーーっそ!あっそ!私は他人って訳ね!
うーーっ腹が立つっ!」

缶をベコッと潰すと
まだ一口しか飲まれていないビールが勢いよく溢れ、
手や顔を濡らした。

「もう!もう、心配してやらない!
優なんかどーでもいいっ!無職になってのたれ死ね!」

ビールをシンクに投げ入れ、
シャワーに向かった。

結局どれだけお湯を浴びてもスッキリすることはなく、
その後ビールまみれのキッチンを綺麗にしなければならなかった私は、怒りを汚れたシンクに向けた。

その掃除が終わる頃、ようやく少し落ち着いてきた。

身もキッチンもスッキリしてソファーに乱暴に座った。

「はぁ~私何やってんの……?」

別れた彼氏を一応心配してストーカーみたくなって、
今カノとのデート現場に遭遇?

「バッカみたい」

憐れでしかないな……

別れた後も優に右往左往させられてて、ちょっと笑えた。

「私って結構一途だったんだなぁ。」

ちゃんと恋愛できてたんだ。
終わっちゃってるけど。

なんだかバカらしくなってきて布団に潜り込む。

目を閉じると市原しおりさん(多分?)の姿が浮かんできた。

露出の多い派手なワンピースに濃いめの化粧。
スラッとしたふくらはぎが印象的だった。
仕事だからあんな格好なんだろうな。
化粧を取ったら優好みのフェミニン系なのかも……

優が今まで連れていた感じとは180度違うけど、
優はどんなタイプもいけるのかもね。

ごろんと寝返りをうつ。

優は私と別れても寂しくもなかったんだよね。
仕事も辞めるとしてもフツーにこなしてたわけだし。
幸代さんからの情報だと落ち込んでる風でもなかったみたいだし。

結局一人相撲って訳か……

「……寂しいな……」

自分で自分を慰めるように体をギュッと抱き締めた。








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