恋愛格差
気がついたら朝だった。
しかもゆっくりできる土曜なのに早朝5時。

少し気分はスッキリしていた。
あと残った心のしこりは日が経つと共に小さくなるだろう。

もう寝られそうにないのでコンビニまで朝御飯になるようなものを買いにいくことにした。

「ふわぁ~」 
誰も見てないことをいいことに、マンションの廊下で大きなあくびをした。
まだ日は昇っていなくて暗いのを良いことに素っぴんだし、髪はとかしただけ。
完全に干物女の身軽な姿。

すごく寒いけどこの季節の早朝は特に空気が澄んでいて大好き。

このきれいな空気をいっぱい吸えば、きっとそのうち心も身軽になれるだろう。

そう信じてマンションを後にした。

コンビニで昨夜の残りであろうサンドイッチとホットコーヒーを買って、なんとなく道沿いにある公園に入ってみた。

ブランコと滑り台しかない小さな公園。

「寒い~」と小さく呟いてゆっくり回りを見渡した。

しんと静まり返った公園。
昼間とは違い何の物音もしない。

……はずだった。

「……くしゅん、」

!!

ベンチに丸くなって座ってる……人がいた。

こんな寒空に……っていうかまだ暗いんですけど!

浮浪者……?

怖くなって後ずさる。

そして公園を走って出た。

こ、怖かった……
公園なんかに入るんじゃなかった。

心臓がバクバクいってる。

しかし、歩道に戻ると
ちらほらとジョギングやウォーキングしてる人がいる。

あ、そっか。
この時間はそういう人がいるんだ……

ほっとして公園のフェンス越しにもう一度ベンチの方を見る。

ベンチに体育座りをして暖をとるような格好で膝に頭を埋めている。

長めのコートを着ているようなその人の横に置いてあるのは黒っぽいビジネスバッグ。

やっぱりウォーキングって感じではない。
浮浪者でも無さそうだが。

ジーッと見ていると、
なんだか見覚えがある……ような。

まさか、

「……すぐる?」

小さな声だったから聞こえるはずはない。

だけどその人はハッと顔をあげた。

暗くて確信はできない。

だけど、まさかほんとに……優?
こんな時間に……こんなところになぜ?








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