恋愛格差
あなたは何者ですか?
明るくなった部屋の中
公園にはもう居ないと自分に言い聞かせた。
そして見なかったことにした。
というより、あれは違う人だったと思うことにした。
だいたい、あんな朝方に公園にスーツで座ってるっておかしいでしょ!
ないない。
風邪引くどころか凍死だわ。
夕方、もう一度買い物に行くついでに公園を覗いてみたけれど、そこにはお爺ちゃんが座っていただけだった。
「……よかった」
……よかった、なんておかしいんだけど、
そこにまだ優(に似た人)が座っていなくてホッとした。
もしも優だったらどうしていいかわからないし。
安堵したと同時に寂しさを覚えて
週末しか行かないちょっと遠い激安スーパーに向かうと、そこは土曜の夕方。
戦場だった。
子供や旦那さんを連れた奥様方がひしめき合っていた。
子供は意味もなく走り回っているし、
普段スーバーに来ない旦那さんはいろんな棚から物珍しいものを奥さんの持つカゴに入れようとして叱られ、また元の棚に戻しに行く。
ただでさえも人が多いのに、無駄な動きが多い。
もうちょっと早い時間に来るんだった……
そう思ったが、もう違うスーパーに行くのも面倒だ。
諦めてカゴを取り、ざわめいた店内に入る。
えーっと、とりあえず……
野菜コーナーをぐるっと見回して一歩を踏み出したとき、
下腹に柔らかい衝撃があった。
「わっ!」
「あ、ごめんね!」
5歳ぐらい?の利発そうな男の子だった。
「下の方見てなかった。ほんとにごめんね。」
「おばちゃん、足、踏んだよ!でも大丈夫。」
おばちゃん……まぁそうなんだけど……
慌てて足を引っ込め、顔を覗き込む。
「ほんと、ごめんね。気を付けるよ。」
「僕も……ごめんなさい。ママ探してたから……」
ママとはぐれたという事。
まぁこの混雑具合じゃ納得だ。
「レジのところで待ってたら会えるんじゃない?おばちゃんも付いてってあげる。」
そっと背中を押すと
「いいよ。自分で行けるから。」
と、不安に思うことも無いのか気丈に笑ってみせた。
ただ、困ってる(?)幼児を放っておいては大人が廃る……
「え?そう?でも……」
と困惑する私に背中を向けスタスタとレジの方へ歩き出す。
「ま、待って……」追いかけようとした時、
「せいちゃん!ここにいたの?」
「ママ……」
「探したよ~」
「僕も探してて。」
「入れ違いになっちゃった?」
「うん。みたいだね。」
「ごめんね、タイムセールに夢中になっちゃっ……」
ニット帽をかぶったカントリー風の女の人と目が合った。
そしてその人は私を食い入るように見ている。
「あ、あの、私…………、え?」
「……あ、れ?……あなた……」
随分印象が違えどそれは
市原ゆかりさんだった。