恋愛格差
日が落ちるほんの少し前のオレンジ色の公園に、私たちは居た。
とはいってもせいちゃんという男の子はブランコに乗っていて遠く離れた場所に、
私と市原ゆかりさんは公園の入り口近くのベンチに座っている。
なぜかゆかりさんが買ってくれた暖かいミルクティを
二人して飲みながら。
「……はぁ。こんなところを見られるなんてね。すぐるの元カノさんに」
最後の一言が胸にグサッと突き刺さった。
元カノ……確かにそうでしょうけどそれをハッキリ言うか!?
「あなたのお名前は『市原さん』で合ってます?」
「えぇ、そうよ。市原ゆかり。いつぞやはお電話で失礼したわねぇ。」
フフフと意味深に笑う。
完全に私を挑発している。感じが悪い。
さっきのせいちゃんに対する態度は普通の優しげなお母さんだったのに。
「あなたは優とお付き合いしてるんですか?」
「えぇ~?それはどうかしらぁ……親しいのは確かだけど。」
なんかこの人と話してるとムカムカする。
「まぁねぇ……私とすぐるは学生時代の知り合いよ。」
「え?」
知り合いだった?
それなら少しニュアンスが変わってくるかも。
「お知り合いだったんですか?それで店に?」
なんだ……なんてホッと息をついてると
「ただの知り合い……だと思ってる?」
へ?あ、まさか……
「元カノよ。私も。」
フフンと嘲笑うかのように私を見る彼女。
その彼女をまじまじと見る。
カントリー風の格好にニット帽。
ウ~ン。優の好みとはかけ離れているような。
まぁ私も一応彼女だったし、本命は別ってことなのか?
まだ凝視している私に
「な、なによ。」
「いえ。
あなたにお子さんがいるなんて思いませんでした。」
「……」
「それは優も?」
「……あなたはすぐるに会ってるの?」
質問に質問で返されてイラッとした。
質問に答えずミルクティを飲み干す。
会ってる訳がない。別れたのを知ってるくせに。
その原因も全部あなたが関わってる。
ベンチを立ち上がり、「ご馳走さまでした」と視線を向けた。
「っ!待って!」
先程までの余裕っぷりはどうしたのか、
私を引き留めようとする。
「まだ何かあります?」
「すぐるは……すぐると連絡は取ってる?」