恋愛格差
あぁ……私の母性本能みたいなものがムクムクと沸き起こる。
ヤバい。ヤバすぎる。
これは優に手玉を取られる一歩手前。
何度も懐柔されたこの一年余りの経験が
今回も思わぬ方向へ私を導く。
「いや……忘れる……と言いますか…
忘れにくいじゃない?こんなんじゃ。
忘れたいから教えて。
優にあったこと。思ってること。全部っ!」
なんか、言ってることおかしいんだけど、結果良ければいいか。
雑多な考えの持ち主である私は最終的にこんなことを思った。
だけど、優は「じゃあ教えない」と。
「だって俺のこと忘れちゃうんでしょ?」
うーん……
離れていくくせに忘れるな、と?
じゃあ
「忘れない。忘れたくないから教えて。」
優は明後日の方向を向いて考えている。
その姿もスマートかつ愛くるしい。
以前より余裕が出ている。
これは優の中で何かを吹っ切ったから?
「やっぱり、教えられないな。」
「なんでダメなの?」
ここまで言ったのに?
「……透子には……関係の無いことだし。」
その言葉が私の心臓を突き刺す。
息が苦しくなってくる。
そして胸の奥底からフツフツと沸き上がる怒り。
「……わかった。無関係なんだもんね、私たちは。」
呪いを吐くような私の声に優は不安な顔をした。
「と、透子……?」
「結局優は私には何も話してくれる気はないんだね。
初めから私を煙に巻いてそれで何も無かった事にするんだ。」
もう優の顔なんか見てる余裕はなかった。
「私、優の何を見てたんだろ。一年も……
私なんか優にまともに相手にされてなかったのに。」
くるっと優に背中を向けて歩き出した。
「透子……」
背中に届いた声は思った通り悲しそうで。
でもそれ以上の悲しみに包まれていた私には何も届かなかった。
「……言えないよ」
そんな優の悲痛な喘ぎも。