恋愛格差
彼女との対決
私が去ろうとする後ろから
「透子」「行くなよ」「ごめん」
とかいろいろ言われてたけど、結局優は私の知りたいことには何一つ答えてくれなくて。
だから
「ごめん。呼び出しといて悪いんだけど、三池さんにこのあと呼ばれてるんだ。また仙台に行く前に連絡するね。」
と、その場を後にした。
優はもちろん、呆然としていたけど。
そしてその足で私は情報をくれた(?)ゆかりさんにもう一度会うことにした。
ほんとは優から聞きたかったし、そうするべきなのもわかっている。
ゆかりさんは何かを知ってる。
優が会社を辞めると知って、慌てて会いに来たんだから。
それに、優はゆかりさんとは付き合いたくないらしい。
ゆかりさんとは繋がらない電話が物語ってる。
仕事に関する電話が掛かってくるかもしれないのに、今電話番号を変えたりはしない。
実際私が送ったメールを読み、会いに来てくれた。
つまり。
ゆかりさんを避けている。
……あれ?
もしかして、会社を辞めるのはゆかりさんのせい?
優の会社ってゆかりさんの働く店の客がいるんだよね?
そう思い始めると、パズルのピースがピタリとはまるように思えてくる。
全ては私の憶測。
でも恐らくそれが真実……
「いらっしゃいませ~」
という声と共に大きなカラオケの音。
薄暗い店内には
少し音の外れた歌声を響かせる恰幅のいいおじさんが、一人カウンターにいた。
その横にはママらしき40代ぐらいの華やかなおばさま。
そしてカウンターの中でお酒を片手にこちらを見ている……いた。ゆかりさんが。
会員制のスナックなのに見知らぬ女が入ってきたもんだから、ママとお客さんは不思議そう。
でも、おそらく女一人ということであまり警戒されてないようで、すぐに笑顔になって
「あらぁ。お一人?どなたかの紹介かしら?」
とスツールから腰を上げて寄ってきた。
「はい。吉岡さんに。」
「吉岡くんね!嬉しいわぁ。女性に来ていただけるなんて!どうぞ座って~」
おじさんも、自分一人に三人も女性がいて嬉しそうだ。
ゆかりさんをじっと見るとこちらを睨んでいた。