恋愛格差
「どうぞ~」
ママらしい女の人は、おじさんとは3席ほど離れたカウンター席に案内してくれた。
私はママにニコリと笑ってスツールに腰かける。
「……いらっしゃいませ……」
まったく歓迎されてない声に顔を上げる。
接客のプロとは言えないな。
口許は笑ってるけど明らかに動揺している。
少し怒りも混じってるかな?
まさか職場に乗り込まれるとは思わなかったんだろうな。
もちろん、私も思い付きなんだけど。
「こんにちは」
「お飲み物はどうしましょう?」
「ビールはあります?」
ボトルを入れるわけには行かないし、ビールが無難だろう。
「あら?吉岡くんのボトルがあるわよ!それにしたら?」
とママが間に入ってきた。
「……え?でも……」ゆかりさんは戸惑いを見せたが、
「最近忙しそうだし、たくさん残ってるじゃない。吉岡くんのご紹介なんだからいいんじゃない?」
ね?
と私ににこやかに話しかけてきた。
まぁ、ガブガブ飲む訳じゃないし。
「じゃあ、お願いします。」
とママに頷いた。
しぶしぶ、ゆかりさんはボトルを手にして私に「ロックにします?水割り?」と聞いてきた。
「あ、水割りで……」とボトルをチラッと見て驚いた。
この店にはカウンターの壁面に沢山のお酒のボトルが並んでいる。
殆どがボトルキープの同じ酒。
最近の傾向からか、焼酎が多い。
そしてウイスキー、ブランデー。
その中でも恐ろしく高そうなブランデーのボトルをゆかりさんは持っていた。