恋愛格差
店内はしーんと静まり返っていた。
返事がないのでゆっくり頭を上げると、
おじさんのお客さんもママも心配そうに見ている。
ゆかりさんは、瞳を潤ませていた。
「わ、私……そんなつもりじゃ……」
動揺していた。
「す、すぐるは……私を助けてくれてるんだと……
そんなに追い詰めていたなんて……思わなかった……」
グラスを持つ手が震えている。
「すぐるの人生をメチャクチャにしたいんじゃない!
私はただ、羨ましくて……」
ゆかりさんの瞳から一粒涙が溢れた。
そこにスッとママがやってきて、ゆかりさんの肩を軽く抱いた。
「ごめんなさい、斎藤さん。今日は店じまいして良いかしら?」
この雰囲気にのまれていたおじさんはハッとして
「あ、あぁ……じゃ、お勘定してもらおうかな……」
「今日はいいのよ。ごめんなさい。勝手な都合で。」
「そ、そう?じゃあお言葉に甘えて……また来るよ。」
と、そそくさと席を立った。
私は立ち上がり、おじさんに頭を下げた。
「すいません、本当に。」
おじさんは苦笑いして「や、いいんだよ。仲良くね。」
と、ドアを開けたママに送られて帰ってしまった。
気の良いお客さんで良かった。
ママが閉店のプレートを出してドアを閉め、再びゆかりさんの横に腰を下ろす。
「ゆかりちゃん、きちんと話なさいね。」
ゆかりさんはまだ震えていたが、小さな声で「……はい……すいません。」と返事した。