甘えたがり煩悩


「少し男に優しくされたくらいで、勘違いとかしないほうがいいですよ先輩」

「は?」

「先輩はすぐ人に騙されますから」

「いったい何の話だってばよ」


ぽかん、と口を開けてあほ面をする私に、後輩は後ろからごごごごご、と効果音が聞こえてきそうなほど私を威圧するように眉の間にしわを寄せる。だから怖い。やめてその顔。せんぱいこわい。


「俺のこと話してたみたいですけど、なんだったんです?」

「あ、明日勉強会をやろうって話になって、そうしたら私部活いけないから聞こうってことに」

「何人で?」

「え」

「何人で?」

「マンツーマンですけど」

「あの間男と?」

「初対面の人を間男と言ってはいけません。って、なんで間男? 言い回しちがくね」

「ダメです」

「人の話聞けよ」

「ダメですから」

「私の成績はどうなってもいいっていうの!?」

「先輩のお粗末な成績よりも、俺の読書時間のほうが大切ですので」

「歪みねえなお前」


うーん、折角誘ってもらったのに断るのは面目ない。部活動のない日か、土日に暇があれば誘ってみようかなと思っていると、後輩はいきなり掴んでいた腕を引っ張り、私の身体ごと、引き寄せる。



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