甘えたがり煩悩
先輩は自分のものだと、先輩の口から言ってほしい。自分の独占欲の強さっぷりに、半ばあきれるけど、しょうがない。
こうなってしまった理由が、この人なのだから。
先輩が逃げないように、腕を掴み取り、顔を寄せる。
「先輩?」
「……こっ、後輩くんは、そんなに私に恥ずかしいことを言わせたいのかなっ?」
「俺、先輩の赤くなった顔が好きですから」
「悪趣味」
「いいですよ、今言えなくったって、ちゃんと先輩から言えるようにしてあげますから。何度言い間違えたって、ちゃんとその頭に叩き込んであげるので、安心してください。でも俺は焦らされるの好きじゃないから、時間がかかった分、その見返りも大きいけど」
「何をする気だよ」
「言えないようなこと」
「聞きたくなかった」
くすっと笑う俺を見て、先輩は顔を青くした。まったく、何を想像したのやら。先輩を傷つけるようなことはしないのに。あ、でも先輩の頭の中が俺でいっぱいになるのは、いいかも。
こんなことを考えている時点で、俺はかなり末期だろう。仕方ない、人一倍独占欲は強いから。
「先輩、もう彼氏欲しいって言わないんですか?」
「…………いわない」
「なんでです?」
「……」
恥ずかしさのあまり涙の膜が張った瞳が、じっとこちらを見上げる。捨てられた子犬みたいで、頭をなでて甘やかしたくなるのをぐっと堪えた。
「……………………私の彼氏は、後輩くんで充分なので」
ガツンと来た。口のにやけが収まりそうにない。嬉しくて、堪らなくなる。うっかり蓋を閉じていた本能が出てきそうになるが、唇を噛みしめて誤魔化す。